「五味」という概念
漢方薬の味は辛・甘・酸・苦・鹹の5つに分けられ、その味により効能が決まっています。
味 | あじ | 対応五臓 | 漢方医学のとらえ方 | 西洋医学のとらえ方 |
辛 | からい | 肺 | 身体の血行をよくし発汗を促します | |
甘 | あまい | 脾 | 消化を助け、滋養強壮によいとされます。 | エネルギー源 |
酸 | すっぱい | 肝 | 内臓や筋肉を引き締め、下痢や多尿など、出過ぎるものを抑えます。 | 腐敗物 |
苦 | にがい | 心 | いらついた気持ちを落ち着かせ、身体にたまった余分な水分を排出します。 | 毒 |
鹹 | しおからい | 腎 | 硬いものを柔らかくします。 | ミネラル |
また、「陰陽五行論」という概念に基づき、病的状態にある「五臓」に対応して有効な「五味」が表のように割り当てられています。
ここで池野一秀先生(長野松代総合病院小児科部長)の推論(※)を紹介します。
小児は五臓のうち肝と心が余剰で脾・肺・腎が虚弱です。五臓を味に当てはめると、肝-酸、心-苦、脾-甘、肺-辛、腎-鹹(かん:塩辛い)に相当します。
さて、コンビニやスーパーなどで子どもたちが真っ先に駆けつけるお菓子コーナーにはどんな味があるでしょうか。チョコレートなどの甘味、スナック類の塩味、ときにピリ辛味などがメインです。つまり、足りない脾肺腎を補うために、その臓器に対応する味である甘味・ピリ辛味・塩味を求めているとこじつけることができます。
う〜ん、目から鱗が落ちました。
※ 「漢方と診療」2012年3月号、Vol.3 No.1
生薬を味で分類する方法
(「Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬」浅岡俊之著、羊土社、2013年より)
甘味の生薬:体液不足を補う作用、安神作用
(例)甘草、大棗、酸棗仁、小麦、膠飴など
辛味の生薬:温熱作用
(例)附子、乾姜、細辛、山椒など
苦味の生薬:清熱(冷やす)作用
(例)黄連、黄岑など
現代社会では、甘い食品の過剰摂取が原因と考えられる病態が多々存在します。その1例に「冷え」があります。甘いものが過剰になれば体液不足を補う作用が過ぎて体に水がたまることになりますが、水がたまれば冷えが生じやすくなるのです。
甘いものが手に入りやすくなったという事情もあるのでしょうが、ストレスに晒され安神を求めるが故の甘味の過剰摂取という現代生活の一つの側面も見て取れます。
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