薬膳について興味を持っているときにタイミングよく発行された本なので、舐めるようにじっくり読みました。 
 しかし、私の理解力がないのか読後も薬膳のイメージが沸かず、消化不良のままです。
 漢方の中医学を勉強しているときもそうなのですが、「陰陽五行論」が登場すると私の脳はフリーズする傾向があるようです。
 

薬膳の3段階の考え方

食養

 いわゆる食養生に相当する。日常の食材や食事の仕方によって病気にならないようにすること。

食療

 食物の薬効を利用して病気や症状を治療し緩和すること。この際注意すべきは調理方法であり、美味しく調理することよりも、薬効を異化した調理法を取らなければならない。一緒に調理する食材についても考える必要がある。

薬膳

 日常の食事の中に高麗人参や茯苓などの純然たる漢方生薬を加えて調理し、一層薬効を高めることである。漢方生薬の薬効を落とさずにおいしさも引き出すことができるかどうか、調理人の腕裁きとなる。

五気

熱性】体を大いに温め、興奮させる作用を持つ
温性】体を温め、興奮させる作用を持つ。熱性よりは弱い。
平性】温めも冷やしもしない性質。
涼性】体を冷やし、鎮静・消炎する作用を持つ。寒性よりは弱い。
寒性】体を大いに冷やし、鎮静・消炎する作用を持つ。
※ 「寒」「涼」の性質を持つ食物に関しては、火を通すことによりその五気の性質が緩和される。




穀類・マメ類 モチ米、ナタマメ玄米(粳米)、トウモロコシ、麦芽、黒豆、大豆、そら豆、エンドウ豆、トウミョウ、ササゲ、豆鼓、豆乳大麦、小麦、小麦粉、ハト麦(薏苡仁)、アズキ(赤小豆)、豆腐リョクトウ
野菜・イモ類・キノコ類
ニラ、ニンニク、長ネギ(葱白)、ヨモギ(艾葉)、タマネギ、ショウガ(生姜)、ラッキョウニンジン、キャベツ、ホウレンソウ、ハクサイ、ミツバ、カブ、シュンギク、ジャガイモ、カボチャ、ヤマイモ(山薬)、シイタケ、白キクラゲ・黒キクラゲ
トマト、レタス、キュウリ、セリ、セロリ、ダイコン、ナス、チンゲンサイ、トウガン、フキ、ゴボウ、キンシンサイ、ユリ根(百合)、クワイニガウリ、アロエ、レンコン、タケノコ、黒クワイ、コンニャク
果実・種子
モモ、龍眼(龍眼肉)、ナツメ(大棗)、サンザシ(山楂子)、シソの実、マツの実、クルミブドウ、ウメボシ、スモモ、プルーン、クコ、クリ、アケビの実、ラッカセイ、ギンナン、ハスの実、カンピョウ(フクベ)、ゴマメロン、イチジク、リンゴ、柿、レモン、ナシ、ビワ、ミカンスイカ、バナナ
魚介類・海藻類
ブリ、タイ、イワシ、サバ、エビカツオ、スズキ、ヒラメ、カレイ、フナ、ナマズ、コイ、ドジョウ、ウナギ、アワビ、牡蛎(カキ)牡蛎の殻、ハマグリの殻ハマグリ、アサリ、シジミ、タニシ、コンブ、ヒジキ
動物羊肉鶏肉、牛肉、スズメ肉、豚レバー、鶏レバー、羊骨鴨肉、烏骨鶏、豚マメ、豚膵臓、豚ハツ、スッポン、スズメの巣、ハチミツ、卵黄豚肉、兎肉、牛乳
漢方生薬・ハーブ・茶・調味料コショウ、トウガラシ山椒、花椒、茴香(フェンネル)、丁子(クローブ)、桂皮(シナモン)、蘇葉(シソ)、バジル、陳皮、当帰、高麗人参、ハマナスの花、紅花(ベニバナ)、八角(スターアニス)、ローズマリー、酒、酢梓実(キササゲの実)、南蛮毛(トウモロコシのひげ)、葛根(クズ)、サフラン、柿蒂(柿のへた)モモの葉括楼根(天花粉)、ドクダミ、菊花(キクの花)、薄荷、茶、ハブ茶、ギムネマ茶、カモミール山梔子(クチナシの実)、木通、梓白皮、柿の葉

五味

 食物や漢方生薬の味を五行に基づき「酸・苦・甘・辛・鹹」の5つに分けたもので、それぞれ「収・堅・緩・散・軟」という基本的性質を持っている。
 五味はそれぞれ対応する五臓に入り、栄養する働きを持っている。酸味は肝に入り、苦味は心に入り、甘味は脾に入り、辛味は肺に入り、鹹味は腎に入る。適量の五味は五臓を栄養するが、過量はかえって五臓や身体各部に負担をかける。

酸味】(肝)収斂固渋作用
 収斂作用:ものを引き締める作用
 固渋作用:ものを固め、出し渋らせる作用

(例)
・(収斂)しめサバに代表されるような、筋肉を引き締める働きを指す。酸味の強いものを摂ると、のどが引き締まるような状態となるのはこのためである。
・(固渋)梅干しは下痢や寝汗に有効。
・(収斂固渋)酢にも感染を引き締め発汗を抑制する制汗作用がある。

★ 酸味を欲する→ 肝の系統が変調を起こしていることを示唆する。

 その他にも、酸味は筋肉(蛋白質)を引き締める作用があり、過食すれば咽喉部の筋肉に影響し、声帯の可動域が狭まるため、声の出が悪くなり、またのどを痛めやすい。 

苦味】(心)燥湿堅化作用・清熱鎮静作用
 燥湿堅化作用:便などの余分な水分を除き、柔らかくなりすぎたものを堅くする作用
 清熱鎮静作用:胸部の煩熱を除き、精神安定を測る作用

(例)
・(燥湿堅化)苦味の強い緑茶や、漢方生薬でも黄連や黄岑は腸内の余分な水分を除き下痢を止める作用がある。
・(清熱鎮静)苦瓜、緑茶、黄連、山梔子などがこれにあたる。

★ 苦味を欲する→ 心の系統が変調を起こしていることを示唆する。

甘味】(脾)弛緩作用・滋養作用
 弛緩作用:筋緊張や精神緊張をゆるめる作用、緊張緩和による鎮痛作用も併せ持つ
 滋養作用:虚弱体質や体力消耗の回復

(例)
・(弛緩)昔の刺抜き地蔵のお札にはカンゾウエキスが塗られていたが、甘草には筋緊張をゆるめる効果があり、のどに刺さった骨や刺抜きに効果がある。
・(滋養)麦芽糖や水飴には滋養作用があり、小建中湯に膠飴(水飴)が配合されているのはこのためである。

★ 甘味を欲する→ 脾胃の系統が変調を起こしていることを示唆する。

 その他にも、甘いものの過食は胃腸障害や口周囲の吹き出物、口角炎を起こしやすい。

辛味】(肺)発散発汗作用
 発散発汗作用:体表の気を発散し、発汗させる作用

(例)
・トウガラシなど辛いものを食べると、体が熱くなると同時に毛穴が開き発汗する。風邪の初期には長ネギ、ショウガなどの辛味の強いもので発汗して治す。

★ 辛味を欲する→ 肺の系統が変調を起こしていることを示唆する。

 トウガラシの過食は、呼吸器系に悪影響を及ぼし、咳・喘息を悪化させる。また、肺と表裏関係にある大腸や、肺の支配領域である皮膚にも悪影響を及ぼし、痔やアトピー性皮膚炎などの皮膚病が悪化する。

鹹味】(腎)軟化散結作用・通便作用
 軟化散結作用:硬いしこりを柔らかくする作用

(例)
・(軟化散結)海藻類は瘰癧(頚部リンパ節結核)によいとされる。
・(通便)にがりを含む粗塩や塩類性下剤の芒硝には便をや若くする働きがある。

★ 鹹味を欲する→ 腎の系統が変調を起こしていることを示唆する。

 塩分を取り過ぎれば腎機能が弱り、むくみや高血圧を起こしやすい。

漢方薬膳の薬効分類

治療理論漢方における15の作用分類
三陰三陽論発汗解表 清熱 温補 
五気清熱 温補
気血水論補気 行気(こうき)・降気・鎮静 補血 駆瘀血 補津潤燥 利水・利湿
五臓養肝・平肝 養心・安神 補脾胃・健胃 補肺・潤肺 補腎
滋養強壮

発汗解表作用

 発汗により体表の病邪を発散させる作用のこと。風邪の初期や風邪に伴うこり・関節痛に用いる。

清熱作用

 寒性・涼性の食物・漢方生薬により発熱や炎症と云った熱症状を納める作用のこと。発熱・体のほてり・各部の炎症・腫れなどに用いる。また、暑気あたりや夏ばての予防にも有効。

温補作用

 熱性・温性の食物・漢方生薬により冷えたカラダを温め補う作用のこと。冷え症や冷房病に用いる。また冷えによる関節の痛みや下痢、月経痛にも有効。

補気作用

 気力を益し体力を補う作用のこと。気虚の状態、つまり虚弱で疲れやすく元気のないものに用いる。

行気・降気・鎮静作用

 行気とは、うっ滞した気の流れを活発にして巡らせる作用、降気とは頭や胸などに上衝した気を下げる作用。鎮静とは行気・降気作用の結果、イライラ、梅核気、精神不安、不眠、気分が晴れない等、気のうっ滞や気の上衝に伴う精神症状を改善する作用である。

補血作用

 血液を補う作用(造血作用)。血虚証に伴う症状(貧血、顔色が悪い、爪が脆い、目のかすみ、めまい、動機など)に用いる。婦人科系の働きが悪いもの、不正出血、不妊症にも用いる。止血作用を併せ持つものもある。

駆瘀血作用

 生理活性を失った血液(流動性が低下した汚れた血液)を排除して血流を改善する作用。月経不順、冷えのぼせ、吹き出物、内出血など瘀血を伴う症状に用いる。止血作用を併せ持つものもある。

補津潤燥作用

 津液を補い、身体各部の粘膜や皮膚の乾燥を潤す作用。乾燥に伴う炎症・発熱・体のほてりを鎮める作用を併せ持つ。津液不足に伴う咽痛・声がれ・乾燥性の咳・口渇・皮膚の乾燥などに用いる。

利水・利湿作用

 利尿をはかり、水分代謝を改善することにより、身体各部の湿邪・水滞を排出する作用。尿不利、下痢、消化不良、ガス腹、腹部膨満感、むくみ、湿邪に伴う関節痛などに用いる。

養肝・平肝作用

 養肝は肝を滋養することにより肝機能の失調を整える作用、平肝は肝の失調による気血の頭部への上衝を鎮める働きのこと。この養肝・平肝作用により、めまい、イライラ、情緒不安定、頭痛、かすみ目、耳鳴り、高血圧などの症状を改善する。二日酔にも有効。

養心・安神作用

 養心(ようしん)とは心の気血を栄養する作用、安神とは精神を安定させる作用のこと。動悸、息切れ、舌のもつれ、心労、精神不安、不眠、多夢、健忘などの症状を改善する。また、心疾患の症状改善を助ける。

補脾胃・健胃作用

 補脾胃とは消化器系全体の機能を補う作用のことで、胃腸虚弱、消化不良、食欲不振、軟便、下痢、腹張りなどの症状を改善する。また胃腸虚弱で手足が重だるく元気が出ない場合にも用いる。健胃とは、胃の働きを調え、あるいは活発にして、食欲増進・消化促進する作用のことで、胃部不快感・嘔気・消化不良といった症状を改善する。

補肺・潤肺作用

 補肺とは呼吸器系を補うことにより、咳・喘鳴を鎮め、去痰する作用であり、体力低下で咳・喘鳴が長引く場合にも用いる。潤肺とは、呼吸器系の津液不足を潤すことにより、咳・喘鳴を鎮め、去痰する作用である。

補腎作用

 腎を補う作用。水分代謝・尿の生成と云った泌尿器系の機能を正常にし、また性欲減退・インポテンツ・早漏・精子活動低下といった生殖器系の機能低下を改善する働きを持つ。上記機能が低下した状態がいわゆる腎虚であり、これに起因する腰膝の重痛・倦怠疲労・下半身の冷え・夜間頻尿・耳鳴り・めまいなどの諸症状にも用いる。

滋養強壮作用

 体力・抵抗力・精力を高める作用。補肺・補脾胃・補腎の3つの方法がある。腎を補うことを基本に、状態に応じて肺や脾胃を補い、強壮・強精をはかる。
補肺強壮)病後の衰弱・体力低下などで呼吸器系の抵抗力が弱まり、風邪を引きやすい状態、咳や喘息が長引く状態に用い、呼吸器系を補いながら体力をつけ抵抗力を増強する。
補脾胃強壮)胃腸虚弱に伴う四肢や全身の倦怠感に用い、胃腸を補い消化を助け、強壮する。
補腎強壮強精)性欲減退や生殖機能の低下に対し、腎を温め補うことにより精力増強を図り、強壮する作用を云う。また腰膝の倦怠感と冷痛、下半身の冷え、夜間頻尿、尿失禁、耳鳴り、めまいなどの腎虚に起因する諸症状を改善する。

漢方薬膳 作用分類食材表

理論作用分類食材
三陰三陽
発汗解表豆鼓、ショウガ、長ネギ、カモミール、クズ、シナモン、シソ、バジル、ハッカ、ペパーミント、レモンバーム
清熱アズキ、大麦、ハト麦、リョクトウ、アロエ、キュウリ、セリ、セロリ、ダイコン、トウガン、トマト、ニガウリ、レタス、レンコン(生)、イチジク、柿、スイカ、スモモ、ナシ、アサリ、シジミ、タニシ、ハマグリ、菊花、クチナシの花、ドクダミ、モモの葉
温補ナタマメ、モチ米、ショウガ、ニラ、ニンニク、長ネギ、ヨモギ、鶏肉、羊肉、ウイキョウ、花椒、クローブ、シナモン、コショウ、酒、サンショウ、トウガラシ、ハッカク

補気玄米、小麦、小麦粉、モチ米、カボチャ、黒キクラゲ、シイタケ、ヤマイモ、クリ、ゴマ、ナツメ、龍眼、ドジョウ、牛肉、鶏肉、羊肉、燕の巣
行気・降気・鎮静キンシンサイ、ラッキョウ、シソの実、牡蛎殻、ウイキョウ、カモミール、クチナシの実、シナモン、サフラン、シソ、バジル、茶、陳皮、ハッカ、ペパーミント、ハッカク、レモンバーム、ローズマリー

補血黒キクラゲ※ 、キンシンサイ、ホウレンソウ※ 、ヨモギ※ 、レンコン(煮)、ゴマ、プルーン、ナツメ、龍眼、牡蛎肉、ブリ、牛肉、鶏肉、レバー、スッポン
※ 印の食材は止血作用を持つ 
駆瘀血黒キクラゲ※ 、セリ※ 、セロリ※ 、ニラ、レンコン(生)※ 、サンザシ、シナモン、サフラン、ベニバナ
※ 印の食材は止血作用を持つ 

補津潤燥玄米、豆乳、豆腐、白キクラゲ、ダイコン、トウガン、ユリ根、イチジク、柿、スイカ、スモモ、ナシ、マツの実、レモン、牛乳、スッポン、燕の巣、ハチミツ
利水・利湿アズキ、エンドウマメ、大麦、黒マメ、ササゲ、ソラマメ、ハト麦、リョクトウ、キュウリ、コンニャク、セリ、セロリ、トウガン、ハクサイ、レタス、アケビの実、カンピョウ、スイカ、スモモ、コイ、コンブ、シジミ、タニシ、ドジョウ、ナマズ、ハマグリ、ヒジキ、豚マメ、花椒、キササゲの実、サンショウ、バジル、茶、陳皮、トウモロコシの髭、ドクダミ 
五臓
養肝・平肝アロエ、セロリ、クコ、スモモ、シジミ、レバー、トウモロコシの髭、菊花
養心・安神小麦、ユリ根、ハスの実、ナツメ、龍眼、牡蛎肉、牡蛎殻、豚ハツ
補脾胃・健胃エンドウマメ、大麦、麦芽、玄米、小麦粉、ササゲ、ソラマメ、ナタマメ※ 、豆腐、モチ米、カボチャ、白キクラゲ、キャベツ、シイタケ、ジャガイモ、ショウガ※ 、ダイコン、タマネギ、ニラ※ 、人参、ニンニク※ 、ハクサイ、ヤマイモ、レンコン(煮)、イチジク、ウメボシ、クリ、サンザシ、ハスの実、ナツメ、龍眼、レモン、ウナギ、コイ、ドジョウ、ナマズ、牛肉、鶏肉※ 、豚膵臓、燕の巣、ハチミツ、ウイキョウ※ 、花椒※ 、カモミール、クローブ※ 、コショウ※ 、サンショウ※ 、シソ、バジル、陳皮、レモンバーム、ローズマリー
※ 印の食材は胃腸を温める作用を持つ 
補肺・潤肺白キクラゲ、ヤマイモ、ユリ根、クルミ、マツの実、ウナギ、豚膵臓、燕の巣、ハチミツ
補腎黒マメ※ 、ササゲ※ 、ナタマメ、ニラ、ヤマイモ※ 、クコ、クリ、クルミ、ゴマ、ハスの実、ウナギ、エビ、豚マメ※ 、羊肉、羊骨※ 、スッポン
※ 印の食材は泌尿器系の機能を改善する作用を持つ 


滋養強壮(補肺強壮)白キクラゲ、ヤマイモ、クルミ、マツの実、ウナギ、燕の巣
(補脾胃強壮)玄米、白キクラゲ、ニンジン、ニンニク、ヤマイモ、ハスの実、ナツメ、龍眼、ウナギ、ナマズ、牛肉、鶏肉、燕の巣
(補腎強壮強精)ナタマメ、ニラ、ヤマイモ、クコ、クリミ、ゴマ、ハスの実、ウナギ、エビ、豚マメ、羊肉、羊骨、スッポン

薬膳の歴史

 薬膳(食物療法)の考え方は、漢方理論体系に基づき、本草学の一環として長い歴史を経て発展してきた。

※ 現在巷にあふれている薬膳レストランなどで行われている薬膳は生薬を1-2品加えただけのものが多く、本格的な薬膳とは言いがたい。

西周

・『周礼』に「医に四あり」として医師を「食医」2名、「疾医」8名、「瘍医」8名、「獣医」4名の4つに分類しており、その筆頭は「食医」である。食医は王の食事を管理する医者のことで、王の体調に合わせてきめ細かな食事指導を行い、時には料理に漢方薬など加えていたようである。

戦国時代〜前漢

・『素問』は内治の基本として湯液を取りあげている。湯液とは煎じ薬と云うよりはむしろ五穀のスープのことと考えられる。五味の理論が登場し、①五味と五臓六腑の関係、②五味の特定の作用(散・収・緩・堅・軟)、五味の過食の弊害について述べられている。「感を治するには熱を以てし、熱を治するには寒を以てす」との記載があり、病態の状態と拮抗する性質の薬物や食品を用いている。

後漢

・『神農本草経』には360種の収載薬物があるが、薯蕷(ヤマイモ)、百合(ユリ根)、大棗(ナツメ)、葡萄(ブドウ)、胡麻(ゴマ)、海藻(ヒジキ)など食べ物や食べ物に近い薬物の薬効が多い。また、薬効を大雑把に見分ける目安として五気(寒涼平温熱)五味の考え方が出てくる。
・後漢末の『傷寒雑病論』は『傷寒論』と『金匱要略』からなる。『傷寒論』の第一番目の処方である桂枝湯は桂枝・芍薬・大棗・甘草・生姜の5味で構成されているが、この中で薬物と考えられるものは芍薬のみであり、他は薬物と云うより食物である。桂枝湯条には処方の効果を上げるために食生活の指導もしていたことが伺える。

・『神農本草経集注』(しんのうほんぞうきょうしっちゅう)道教の不老不死の研究の中で何を食べればいいのか研究していた陶弘景の著作で、食物も薬物も一緒に扱われている。

・『備急千金要方』(ビキュウセンキンヨウホウ)(孫思邈著)第26巻に食治をまとめた変がありその部分を『千金食治』と呼び、この中で「医療というものは、まず病気の根源をよく知り、どこが病に侵されているのかを認知し、食事療法を行う。食事で治らなければそれから薬を使うこと」として食物療法の重要性を位置づけている。五行色体表作成。
・『食物本草』(孟詵:モウシン)最初の食物専門の本草書。

・『太平聖恵方』(タイヘイセイケイホウ)(太宗編纂)28種の疾病に対し食治の方法を記載。
・『聖済総録』(セイザイソウロク)食治門が独立し、29の病証に対する285種に及ぶ薬膳処方が紹介されている。
・『養老奉親書』(ヨウロウホウシンショ)(陳直)1085年頃。老人の病気予防と治療の専門書であり、162種の薬膳処方が収載されている。

金・元

 金元四大家の登場により新しい漢方理論が起こった。この中で、寒涼派(病の原因として熱を取りあげ、寒涼の冷やす性質の薬物を用いて病を治す)といわれる劉河間(リュウカカン)や補土派(病の地方としてまず脾胃を補うことを中心とした)の李東垣(リトウエン)などの理論がその後の食物療法の考え方に影響を与えた。
・『飲膳正要』(インゼンセイヨウ)(忽思慧:コツシケイ)1331年。宮廷医によって書かれた食治薬膳の名著。
・『飲食須知』(インショクスチ)(買銘:カメイ)1367年。食物の性味の他、禁忌・多食の弊害・食い合わせなどについても詳しく書かれている。

・『本草綱目』(李時珍:リジチン)1596年。本草学の集大成。全52巻、収録薬種1892種、処方11096種。
・『古今医統大全』(徐春甫:ジョシュンホ)薬膳の具体的料理法が記載されている。

 数多くの食養専門書が書かれた時代。『食物本草』(盧和:ロカ)、『食鑑本草』(寧原:ネイゲン)、『随息居飲食譜』(王士雄:オウシユウ)

『素問』にみる食養生のポイント

◆ 食養生の重要性と基本原則

・食物が持つ五臓を栄養する働き

 「五穀は養となし、五果は助となし、五畜を益となし、五菜を充となす。気味合いてこれを服し、もって精を補い、気を益す。」(蔵気法時論)

五穀:粳米・小豆・大豆・麦・黄黍
五果:棗・李・栗・杏・桃
五畜:牛肉・犬肉・豚肉・羊肉・鶏肉
五菜:葵(ワサビ?)・韮(ニラ)・藿(マメ?)・薤(ラッキョウ)・葱(ネギ)

 穀類は五臓を養い、果物は五臓の働きを助け、肉類は五臓を補い、野菜は五臓を充実させる働きを持、状態に応じてこれらをバランスよく摂れば、気力も体力も充実し、健康でいられる。

・薬の働きを補助する食養生

 内臓が虚していれば、薬を以て邪を除くと共に、食養生によって内臓の気を補う必要がある。また、病気の治療には薬で全て治そうとするのではなく、その補助療法として穀物・肉類・果物・野菜類などの食物で食養生をほどこし、完治させるべきである。

・薬膳としての五穀

 五穀の薬膳的利用法について紹介しており、五穀のスープや濁り酒だけでも、患者の状態によっては病気を治療することができると述べている。

・食養生の基本原則

 患者の病態が熱していれば冷やす食物や薬剤を用い、逆に冷えていれば温める食物や薬剤を用いるという具合に、病気の状態と拮抗する食物・薬物を摂取する。

◆ 五味理論の要点について

・五味の基本作用

 五味はそれぞれ基本的な作用を持っている。

酸味】ものを引き締める収斂作用
苦味】や若くなりすぎたものを堅くする堅化作用
甘味】緊張をほどく弛緩作用
辛味】気を発散し発汗させる発散作用
鹹味】硬いしこりを柔らかくする軟化作用

・五臓を栄養する五味

 五味はそれぞれ対応する五臓に入り、栄養する働きを持っている。
 酸味は肝に入り、苦味は心に入り、甘味は脾に入り、辛味は肺に入り、鹹味は腎に入る。適量の五味はそれぞれの臓を栄養する働きを持つ。

・五味の偏食の弊害

 適量の五味は五臓を栄養するが、過量はかえって五臓や身体各部に負担をかける。『素問』では、五味を偏って過食した際の影響について様々な理論を展開しており、総じて五味の偏食を戒めている。

『傷寒雑病論』にみる食養生

◆ 『傷寒論』

・桂枝湯系の発汗を主作用とする処方に対し、熱いうす粥をもって薬力を助成するか否かを説いている。桂枝湯以外は熱いうす粥を必要としない。ただし、現在の薬用量は当時の1/6から1/8に減っているので、桂枝湯以外でも発汗解表作用のある薬膳を用いて薬力を助けた方がよい。
・熱病に伴う脱水症状に五苓散を用いる場合は、粗い原末で飲みにくい五苓散を重湯(玄米の煮汁)とまぜて服用させた後、脱水症状から救出するため、また治癒機転と舏る発汗を促すため、多量の温水を服用するよう指示している。
・甘味の強い桂枝湯や小建中湯を与える時ははかないように注意して与えるべきであると注意している。
・強い下剤や吐剤を用いた場合には、粥を飲んで、弱った胃腸を調えるように指示している。
・胃腸を温める理中丸の服用痔には、熱い粥を飲んで薬を助けるようにし、冷えないように衣服や布団を剥がさないよう指示している。

◆ 『金匱要略』

・括楼桂枝湯を服用して発汗しない場合に、熱い粥を服して薬力を助けるよう指示している。
・侯氏黒散の用法として、体内に薬を溜めておくために冷食を指示している。
・歴節病の原因として、酸味と鹹味の過食が挙げられている。
・消石○石散では、大麦粥で散薬を飲んでいる。湯剤以前に多く見られる散剤服用の際には、薬力を助け、かつ胃を保護し野見やすくするために、粥や大棗の煮汁で飲むことが多かった。
・五味の服用は相尅関係のものを控え、各季節にはその季節に配当される味のものを控えるように指示している。例えば、春の肝気旺盛な時に、肝を補う酸味のものを控えるなどである。
・当時の食中毒の注意と多食の弊害を断片的に収録している。

本草書の系譜

・食物と漢方生薬が区別なく同列に収載した時代

(後漢)『神農本草経』
(梁)『名医別録』『神農本草経集注』(493-500年頃)(・・・シッチュウ)陶弘景
(唐)『新修本草』(659年)蘇敬、『本草拾遺』(738年)陳蔵器

・食物を漢方生薬から独立して取り扱う時代

(唐)『千金食治』(652年)孫思邈(ソンシバク)、『食療本草』孟詵(モウシン)、『食医心鑑』(850年頃)昝殷(サンイン)、『食性本草』(934年)陳士良
(北宋)『嘉祐補註本草』(1061年)掌禹錫(ショウウシャク)、『経史証類備急本草』(1082年頃)唐慎微(トウシンビ)
(明)『本草綱目』(1596年)李時珍(リジチン)・・・1800種以上の食物や漢方生薬について、その名称、異名別名、産地や採集時期、良否鑑別法、修治法、気味(五気・五味)、主治と使用例等について多岐にわたり、後漢の『神農本草経』から明代までの歴代本草書から引用整理し、サラには李時珍自身の発見や新たな見解を加えた一大本草書となっている。

(例)生姜の薬効の歴史的推移

※ 歴代本草書における経験例・有効例を積み上げ集大成したものが『本草綱目』ではり、今日よく用いられる生姜の発汗解表・温補・健胃止嘔・食毒や薬毒の解毒といった作用は時代の変遷を経て洗練されてきた。

『神農本草経』・・・ 消臭・覚醒効果のみ
『名医別録』・・・ 五臓に対する作用と風邪の諸症状に対する薬効が追加され、『傷寒論』における主要な用法である止嘔作用も記載
『薬性論』・・・ 水毒の咳嗽に対する作用、半夏と共に用いてみぞおちの痛みを取る作用、杏仁と共に用いて胸膈部の痞痛と熱を取る作用、生姜汁と蜜を合わせて吐き気を止め消化を促進する作用
『食療本草』・・・ 胸膈胃腸部の悪心・煩悶を治す主要な食物
『本草拾遺』・・・ 冷えに対する作用、薬物や食物の中毒症状を除く解毒作用
『潔古珍珠嚢』・・・ 胃腸を補う作用、風邪を治す作用
『用薬心法』・・・ ①薬毒の解毒、②発汗解表、③胃腸の温補・去湿(大棗との相互作用)、④経絡を温め寒を除く(芍薬との相互作用)

『本草綱目』・・・ 「生」は風邪などの発汗解表、「炮」(ホウ)胃腸を補う健胃薬。生姜の多食の弊害について、目の弱いものが多食すれば充血し、痔のあるものが酒と友に多食すればたちどころに悪化する。